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Dash ホワイトペーパー(日本語訳)

翻訳―Japanese Dash Translators Team

Dash:支払いに主眼を置いた暗号通貨

Evan Duffield - evan@dash.org  

Daniel Diaz - daniel@dash.org

要約

サトシ・ナカモトの業績であるBitcoinをベースに、マスターノードネットワークと呼ばれる第二層のインセンティブネットワークを構築するなど、様々な改良を加えた暗号通貨である。交換可能性を高めるためのプライベートセンドや、中央集権によらず即時の取引承認を可能にするインスタントセンド等の改良を含む。

1 序説

Bitcoin [1]は、ポピュラーな交換媒体である暗号通貨として登場し、多数のユーザーを魅了した初のデジタル通貨である[2]。 2009年の登場以来、Bitcoinは主流なデジタル通貨として急速に成長し、売買に利用されている[3]。 販売時点(point-of-sale / POS)でBitcoinを受け入れる際の主な問題は、それが有効なトランザクションであることをネットワークが承認するまでにかかる待ち時間だった。代わりに、決済会社は売り手がゼロ承認のトランザクションを許容するという方法を編み出した。しかし、この方法ではプロトコル外からトランザクションを仲介する信用が必要な取引先を利用する事になる。

 

Bitcoinは公開されている台帳に送信者と受信者が1対1の関係である仮名のトランザクションを提供する。 これは、ネットワーク上で行われたすべてのトランザクションを永遠に記録する[5]。 Bitcoinは、低レベルのプライバシーしか提供しないものとして学術界で広く知られているが、この弱みがあるにも関わらず多くの人々が依然として財務記録をブロックチェーンに預けている。

 

Dashは、サトシ・ナカモトの業績に基づく、プライバシーを主眼においた最初の暗号通貨である。 この論文では、改ざんのない即時トランザクションと、ダッシュネットワークにサービスを提供するためのインセンティブを与えた第2層のピアツーピア(P2P)ネットワークを使用したBitcoinの一連の改良を提案する。それは結果として非中央集権的で強い匿名性を持つ暗号通貨となる。

2 マスターノードネットワーク

フルノードはP2Pネットワークで動作するサーバーであり、ネットワーク上のイベントに関する更新を受け取るために自身を利用することを他のノードに許可している。フルノードは大量のトラフィックやリソースを必要とし、かなりのコストを伴う。 その結果Bitcoinネットワークでは、これらのノード数が徐々に減少している様子がしばらく観察されており[7]、結果としてブロックの伝搬時間が40秒以上に達している[14]。 Microsoft Research [4]やBitnodesインセンティブプログラム[6]による新しい報酬制度など、多くの解決策が提案されている。

図1: 2014年春時点のビットコインのフルノード
図1: 2014年春時点のビットコインのフルノード

フルノードはネットワークの良好な状態を保つために非常に重要である。これらのノードはネットワーク上の各クライアントに対して同期と迅速なメッセージ伝播機能を提供する。我々はDashマスターノードネットワークと呼ばれる第2層のネットワークを提案する。マスターノードは高可用性を持ち、ネットワークに必要とされるレベルのサービスを提供することで、マスターノード報酬プログラムに参加することができる。

2.1 マスターノード報酬プログラム ― 費用と支払

Bitcoinネットワーク上でフルノードが減少する理由の多くは、稼働するインセンティブの欠如である。 時間が経過し、ネットワークの使用量が増えるにつれて、ノード全体を実行するコストが増加し、帯域幅が増え、オペレータはより多くの費用を負担することになる。 コストが上昇すると、オペレータはサービスを統合して安価に稼働したり、軽いクライアントを稼働したりするため、ネットワークにはまったく役立たなくなる。

 

マスターノードはBitcoinネットワークと同様のフルノードだが、ネットワークに一定レベルのサービスを提供することと、参加のための担保が必要である点が異なる。 担保は没収されることはなく、マスターノードが運用されている間は安全である。 これにより、投資家がネットワークにサービスを提供し、彼らに投資への関心を持たせ、通貨の価格変動性を減らすことができる。

 

マスターノードを稼働するには、ノードに1,000DASHを格納する必要がある。 アクティブな場合、ノードはネットワーク上のクライアントにサービスを提供し、その代償として配当の形で報酬が支払われる。 これにより、ユーザーはサービスを提供するために投資を行い、投資から収益を得ることができる。 マスターノード報酬はすべて同じプールから払い出され、総ブロック報酬の約45%[脚注]がこのプログラム専用である。

 

マスターノード報酬プログラムは一定の割合であり、マスターノードネットワークのノード数は変動しているため、期待できるマスターノード報酬はアクティブなマスターノードの現在の合計数に応じて変動する。 マスターノードの稼働による1日あたりの報酬は、次の式を使用して計算できる。

(n/t)*r*b*a

ここでは:  

n はオペレーターがコントロールするマスターノードの数 

t はマスターノードの総数  

r は現在のブロック報酬(現在平均約5DASH)  

b は1日の平均ブロック数。Dashネットワークでは通常576。  

a は平均のマスターノード報酬(平均のブロック報酬の45%)

※【翻訳者注】例:(1/4000)*5*576*0.45=0.324 DASH

マスターノードの稼働による投資収益率は次のように計算できる。

((n/t)* r * b*a*365) / 1000

変数は上記と同じ。

※【翻訳者注】例:((1/4000)*5*576*0.45*365)/1000=11.826%

2.4 役割とProof-Of-Service


Attacker Controlled Masternodes / Total Masternodes Required Picked Times In A Row
Probability of success 
DASH Required
1/2300 6 6.75e-21 1,000DASH
10/2300 6 6.75e-15 10,000DASH
100/2300 6 6.75e-09 100,000DASH
500/2300 6 0.01055% 500,000DASH
1000/2300 6 0.6755% 1,000,000DASH
     

表1. The probability of tricking the system representing one individual Masternode as failing proof-of-service

3 プライベートセンド

我々は、高度なプライバシーを提供するクライアント端末を利用するユーザーのプライバシーを向上させるために、標準的なトラストレス実装をすることが重要であると考える。 Electrum、Android、iPhoneのような他のクライアント端末も、同じ匿名レイヤーを直接実装し、プロトコル拡張に利用する。 これにより、ユーザーはよく理解されたシステムを使用して資金を匿名化する共通の経験を得ることができる。

 

プライベートセンドはCoinJoinを改良し、拡張したバージョンである。 CoinJoinのコアコンセプトに加えて、我々は、分散化、連鎖アプローチを使用することによる強い匿名性、金種分割および受動的な事前ミキシングなどの一連の改善を採用している。

 

暗号通貨のプライバシーと交換可能性を向上させる際の最大の課題は、ブロックチェーン全体を不明瞭にしない方法でそれを実行することである。Bitcoinベースの暗号通貨では、出力が未使用かどうかを知ることができる。一般にUTXOと呼ばれ、未使用のトランザクション出力を表す。これにより、すべてのユーザーがトランザクションの完全性の保証人となることができる公開台帳が作成される。Bitcoinプロトコルは、信用が必要な第三者機関の関与なしに機能するように設計されている。彼らが不在の場合、監査機能を存続させるためにユーザーが公開されたブロックチェーンに容易にアクセスできるようにすることが重要である。我々の目標は、成功したと信じている通貨のこれらの重要な要素を失うことなく、プライバシーと交換可能性を向上させることである。

 

通貨内で分散型のミキシングサービスを利用することにより、通貨自体を完全に代替可能な状態に保つことができる。交換可能性は、通貨のすべての単位が均等になるように規定する金銭の特性である。あなたが通貨として金銭を受け取る時、通貨の以前のユーザーからの履歴がもたらされるべきではない。また、ユーザーには履歴から自分自身を切り離すための簡単な方法が必要である。従ってすべてのコインを等価に保つべきである。同時に、どのユーザーも他のユーザーのプライバシーを損なうことなく、公開台帳の財務上の完全性を保証する監査人としての役割を果たすことができる。

 

交換可能性を向上させ、公開台帳の完全性を維持するために、分散型で信用不要な事前ミキシングという方法を使用することを我々は提案する。通貨の交換可能性を有効に保つために、このサービスは通貨に直接組み込まれており、使いやすく、一般ユーザーにとって安全である。

図2: 2人のユーザー間のコインジョイン取引の一例  [11][12]
図2:2人のユーザー間のコインジョイン取引の一例 [11][12]
図3:Forward Change Linking
図3: Forward Change Linking
図4: Through Change Linking
図4: Through Change Linking
図5: Three users submit denominated funds into a common transaction. Users pay themselves back in the form of new outputs, which are randomly ordered.
図5: Three users submit denominated funds into a common transaction. Users pay themselves back in the form of new outputs, which are randomly ordered.
Depth Of The Chain

Possible Users (n)r

 

 2  9
4 81
8 6561

※【翻訳者注】上の表の最上段の右側の列にある (n)rは

表2. How many users could possibly be involved in N mixing sessions.

 


Attacker Controlled Masternodes / Total Masternodes Depth Of The Chain
Probability of success 
DASH Required
10/1010 2 9.80e-05 10,000DASH
10/1010 4 9.60e-09 10,000DASH
10/1010 8 9.51e-11 10,000DASH
100/1100 2 8.26e-03 100,000DASH
100/1100 4 6.83e-05 100,000DASH
100/1100 8 4.66e-09 100,000DASH
1000/2000 2 25% 1,000,000DASH
1000/2000 4 6.25% 1,000,000DASH
1000/2000 8 0.39% 1,000,000DASH
2000/3000 2 44.4% 2,000,000DASH
2000/3000 4 19.75% 2,000,000DASH
2000/3000 8 3.90% 2,000,000DASH
     
       

表3. The probability of follow a PrivateSend transaction on the network given the attacker controls N Nodes. 

4 インスタントセンドによる即時トランザクション

5 追加の改良

5.1 x11ハッシングアルゴリズム

5.2 採掘供給

図6: 採掘報酬の予定
図6: 採掘報酬の予定

6 結論

このホワイトペーパーでは、一般ユーザーのためにプライバシーと交換可能性を向上し、価格変動性を抑え、ネットワーク全体の通信伝播を迅速化するといったBitcoinの設計を改良するための様々な概念を紹介している。これは、Bitcoinのような他の暗号通貨の既存の単一層モデルではなく、インセンティブのある二層モデルを利用することによってすべて成就される。 この代替的なネットワーク設計を利用することにより、分散型のコインミキシング、即時トランザクション、およびマスターノードの選抜集団を用いた分散型の意思決定など、多くのタイプのサービスを追加することが可能になる。

参照