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Dashコアグループがコンプライアンス支援のための資料を公開

著者:とみ三(当サイト管理人)

Dashの開発を中心的に担っているDashコアグループのCEO、ライアン・テイラー氏が『Dashのプライバシー機能と法令遵守』と題する記事をDash公式ブログに投稿し、『PrivateSendの法的位置』(PDF)という資料を公開した。同資料には、Dashのトランザクションルールはビットコインと全く同一であるということが示されている。

テイラー氏の投稿内容

以下は、テイラー氏のブログへの投稿内容の要旨である。

Dashコアグループは、コンプライアンスの取り組みに対するサポートを求める複数の交換所から問い合わせを受けています。特に規制当局は、プライバシー機能を備えたコインを取り扱う際に、交換所がKYC/AML規制に準拠できない可能性があることを懸念しています。Dashはしばしば、マスコミやオンラインでプライバシーが強化された暗号資産に分類されているため、規制当局の懸念事項になることがあります。

 

これらの懸念に対処するために、Dashコアグループは規制当局と対話する交換所をサポートしています。そのサポートは、テクノロジーを説明し、Dashを受け入れることでBitcoinに比べてリスクが増加することはないと規制当局に説得するのに効果的です。Dashを取り扱う際に必要な手順とコンプライアンスツールは、ビットコインを取り扱うために必要なものと同じです。

 

規制当局、交換所、マネーサービスプロバイダー、および議員に情報提供をし、サービスプロバイダーが引き続きユーザーにサービスを提供できるようにするために、この情報をWebサイトで公開しています。ダッシュが管理不能なリスクをもたらす可能性があるというすべての懸念を払拭するため、来月中にコンプライアンス担当者と規制当局への情報キャンペーンを計画しています。

DashのPrivateSendと同一形式のトランザクションをビットコインで作成することが可能

同資料の中でDashコアグループは、Dashのプライバシー向上機能であるPrivateSendを使う際のミキシングトランザクションと全く同一のトランザクションをビットコインでも作成できることを紹介している。

  • DashのPrivateSendを使う際のミキシングトランザクション

https://blockchair.com/dash/transaction/a8656b7655c14445c652d8e5e27a6155e8a39aa792f99210607437737999a945

  • 上記Dashのミキシングトランザクションと同数量・同形式のトランザクションをビットコインで作成したもの

https://blockchair.com/bitcoin/transaction/2e9aa4e7c7aa704055adc7ce396533164a097515189a30f1e9c8fa73b21dc174

 

どちらも0.20000200 (DASH or BTC)の送信であるが、インプットとアウトプットのアドレスがそれぞれ20個で、送信元の各アドレスから0.01000010 (DASH or BTC)が送信先の各アドレスに送られていることがわかる。このトランザクション内で、どのアドレスからどのアドレスに0.01000010 (DASH or BTC)が移動したかを特定するのは難しくなっている。

JVCEAの規則とDash

資金決済法に基づく認定資金決済事業者協会である日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)が定める『仮想通貨の取扱いに関する規則』の第4条第3項に、「会員は、移転記録の追跡ができない又は著しく困難である仮想通貨については、テロ資金供与やマネー・ローンダリング等に利用されるリスクが高く、公認会計士又は監査法人による適切な監査が実施できないおそれがあることから、これら問題が解決されない限り、取り扱ってはならない」という旨の記述があるが、「移転記録の追跡ができない又は著しく困難である仮想通貨」がどのような仮想通貨であるかは定義されていない。仮にDashを「移転記録の追跡が著しく困難である仮想通貨」とするならば、ビットコインも同じく「移転記録の追跡が著しく困難である仮想通貨」としなければ整合性が取れなくなる。Dashはビットコインと全く同一のトランザクションルールを採用しているためである。

 

「Dashは公式クライアントソフトウェアでプライバシー向上機能をサポートしているが、ビットコインの公式クライアントソフトウェアにはそのような機能がないので問題ない。」という意見があるかもしれないが、Wasabi Walletのような誰でもダウンロードできるデスクトップウォレット等を使うことで取引履歴を難読化し、プライバシーを向上することができるので、テロ資金供与やマネー・ローンダリング対策の観点からDashのみを特別視して交換業者が取り扱うことを禁止するのは無意味である。

 

また、Dashが「公認会計士又は監査法人による適切な監査が実施できない又は困難な仮想通貨」に該当するという誤解が一部であるようだが、トランザクションがすべてブロックチェーン上に公開されており、トランザクションルールがビットコインと全く同一なので監査は可能である。UTXO(未使用のトランザクション出力)の合計が残高になる点も同じである。

 

そもそも、同規則の第4条第1項には、「(1)法令又は公序良俗に違反する方法で利用されるおそれが高い仮想通貨、(2)犯罪に利用されるおそれが高い仮想通貨、(3)テロ資金供与やマネー・ローンダリング等に利用されるおそれが高い仮想通貨については、その取扱いの適否を慎重に判断しなければならない」という旨の記述があるものの、交換業者が既に取り扱っているビットコイン等がこれらの仮想通貨に該当しないと断定することができないという矛盾がある。

 

日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)には、矛盾を抱えた規則の見直しとDashについて正確な情報収集を行うことを期待したい。